音・感・和 : 自然音再生の琥珀音響工芸舎
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琥珀音響工芸舎・メールマガジン【東風】
心安らいだり、思わず笑みを浮かべてしまう音楽などの情報、サイトを紹介していきます。毎月1・15日配信です。
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第42号 : 平成18年2月15日
耳を澄まして聞こえてくる自然の響き。思わず笑みを浮かべてしまう音楽などの情報、サイトを見つけてみました。
http://www.onkanwa.com/
(毎月 1・15日配信)
2006/02/15 号
ご挨拶
朝起きると明るくなる時間がだんだんと早くなってきました。調べてみると例年よりもだいぶ遅いものの各地の梅がほころび始めているようです。やっと春が近づいてきた気がしてきます。

旧暦で年が変わってから届いた紀子さまご懐妊の報。目でたい目でたいと思いつつ、驚いたのはそのご懐妊を祝福するかのように起こった慶事。

話によるとご懐妊発表の後、伊勢神宮でも虹が、出雲大社でも虹が出たとのこと。それとニュースで報道されていましたが、プリンセスキコの花が咲いたとのこと。

秋篠宮さまが二年前に植えた苗がこのタイミングで咲いたというのもそれだけお天道様も大喜びということだったのでしょうか。一度このラン園を尋ねたことがありますが、そういえばすぐ近くに熱田神宮もあります。まぁ、新春(旧正月)早々メデタシメデタシです。
おすすめCD
T.R.Mahalingam ( Flute )
T.R. マハリンガム ( Flute )
( RPG : CDNF 147717 )
Mali の愛称で尊敬を一身に集めているT.R.マハリンガム。その演奏は将に鳥のさえずりです。天衣無縫の演奏は、のどかな緑溢れる中にそよいでくる風のようです。本来なら禁じ手とも言える音の動きをやっても、マハリンガム、彼においてだけはそれは天才だからとの言葉に代えられ賞賛されるばかりです。もうその禁じ手がこれしかない!という閃きで出てくるのですから仕方ありません。将に自由自在です。

知り合いが春先、窓を開けて彼の演奏を聞いているとすぐにウグイスなどの鳥たちが飛んできて「ムムッ。誰が歌っているだ?」とばかりに歌合戦が始まるのだそうです。しかし他の演奏家に切り替えた瞬間に鳥たちはプイッとばかりに逃げていくのだとか(^^;) マハリンガムの音楽は小鳥達もビックリするほど自然な音楽だと言って良いでしょう。

彼の録音で最も良いものは“Stil”というフランスのメーカーから出ているものですが今では入手不可。その次に薦められるのがこのタイトルです。最高の格調を持ちながら心地良い風のような彼の演奏。24時間かけっぱなしでも全く飽きることがない素晴らしいものです。
⇒ソフト情報・購入先(世界の民族音楽の店 ZeAmi)
⇒試聴先(Music India OnLine)

T.N.Krishnan : Thyagaraja Masterpience Vol. 4
T.N.Krishnan (ヴァイオリン) etc
( MUSIC TODAY : CD-C92047 )
世界的に見るとクラシック音楽のヴァイオリン奏法や使い方は、独自の発展を遂げたもののひとつに過ぎません。中東でも独自の演奏法がありますが、カルナーティック音楽でのヴァイオリンは、その独自性で一頭抜きん出たものです。

カルナーティック音楽のヴァイオリン奏者の最高演奏家が、このT.N.クリシュナンです。そのスイートで、生き生きと、ピースフルな演奏は、いつ聞いても幸せな気持ちになります。往年の演奏家との共演では最高のアカンパニストとして素晴らしい録音を数多く残していますが、ソロとしても素晴らしい録音を数多く残しています。そのソロの演奏として最高の演奏がこのソフトです。

特に、一曲目“Naa Jeevadhara”の演奏は、伴奏者も含めこれ以上ない出来栄えです。彼の実に楽しそうな演奏につられて打楽器もノリノリ♪打楽器だけの最後の部分などは実に爽快の一言。CDをかけ始めて最初の2分間にはちょっと驚きの録音ミスがありますがそれもご愛嬌。絶対のお勧めです。
⇒ソフト情報・購入先(世界の民族音楽の店 ZeAmi)
⇒試聴先(Nada Anuboothi)

V.Doreswamy Iyengar : Maestro Choice
V.Doreswamy Iyengar ( Veena )
Vallore Ramabhadran ( Mridangam )
( MUSIC TODAY : CD-C91014 )
南インド音楽の最も重要な楽器は撥絃楽器のヴィーナです。南インド音楽はヴォーカルが主体なのですが、ヴィーナの演奏を聞くとヴォーカルもまた、ヴィーナを音楽を学び演奏する際の一種の物差しとして用いることで発達してきたことが理解できます。

もともと音楽によって自らを極めるための伴侶として楽器が存在していただけに、大きな音で皆に聞かせることは想定している楽器ではありません。そのため現在では多くの観客に聞かせるエンターテイメントとしては物足りないところが多いのが事実。最近では光が当たらず、良質な録音が入手できないのが残念なところです。

ここで紹介するCDはその渇きを潤してくれる素晴らしい演奏です。穏やかであり、渋く、それでいてチャーミング。流れるような音のひとつひとつが実に柔らかい音楽を奏でています。特に“Thanam”の部分は優雅で繊細との言葉をそのまま描いたかのような貴重な演奏です。
⇒ソフト情報・購入先(世界の民族音楽の店 ZeAmi)
⇒試聴先(Music India OnLine)

Kadri Gopalnath : Thyagaraja's Pancharatna Krithis
Kadri Gopalnath ( Sax ) etc
( RPG : CDNF 168317 )
南インド音楽で興味深いのは、昔ながらの伝統を大切にしながら楽器についてはどんどん目新しいものを取り入れていることです。その取り入れ方は思わず笑ってしまうほどの物もあります (^^) 個人的に世界最高の宴会芸と称しているジャヤタランガム。これは水を張った茶碗をお箸でチキチン♪チキチン♪と叩いて演奏します。また最近ではエレクトリック・マンドリンや口笛の演奏も。。

興味深いのは、そのようなイレギュラーな楽器での演奏家の方が、ヴォーカルやポピュラーな楽器よりもはるかにしっかりとした古典的テクニックを保持していること。中でも現在、現地で一番の人気を誇っているカドゥリ・ゴパールナートのサックスは素晴らしいの一言です。

特にこのCDで素晴らしいのは、カルナーティック音楽の中でも最高の曲と称されることも多い物ばかりをチョイスしていること。それだけに曲の素晴らしさとともに、そのカッコ良さはジャズ・サックスなど足元にも及びません!事実、ジャズ好きの方に聞かせると皆さん目を丸くしています。爆発的人気を呼びかねない知る人ぞ知る名盤です。
⇒ソフト情報・購入先(世界の民族音楽の店 ZeAmi)
⇒試聴先(Music India OnLine)

T.Muktha : Padams & Javalis
T.Muktha ( Vocal ) etc
( RPG : CDNF 147927 )
カルナーティック音楽で最も重要な系譜が古都タンジョールから伝わる演奏家の系譜です。T.ムクタはその本流中の本流の演奏家です。なかなかまとまった録音がなく紹介することがかなわなかったのですが、80歳を超えて初めてまとまった音源として出されたのがこのCDです。

どこまでも渋く滋味深い声。綺麗な声とは言えませんが80歳にしてこれだけパワフルな声は信じがたいほど。それ以上にひとつひとつの音の連なりの正確さはこれぞカルナーティック音楽の神髄と納得させられるものがあります。またそのヴォーカルに薄く絡むヴィーナの繊細な響きはヴォーカルと完全に一体となっています。ヴィーナの音楽はこれがもともとの姿であることが見事にあらわされています。

録音も世界基準として最高部類です。カルナーティック音楽好きばかりでなく、全ての音楽愛好家に是非とも聞いてもらいたい珠玉の演奏です。
⇒ソフト情報・購入先(世界の民族音楽の店 ZeAmi)
⇒試聴先(eMusic.com)

N.C.Vasanthakokilam
N.C.Vasanthakokilam ( Vocal ) etc
( RPG : CDNF 147909 )
カルナーティック音楽の女性歌手としてもっとも名高いのはM.S.スッブラクシュミ。それに続くのがD.K.パッタマルと言われています。しかし、本当の実力者として伝説化しているのがN.C.ヴァサンタコキラムです。

もともとカルナーティック音楽では女性が表立ってコンサートで歌ったりすることはなかったようです。その状況を変えたのは映画でした。N.C.ヴァサンタコキラムも1930年代から数多くの映画に出演し大活躍。その美しさと、その美声で知られていました。しかし演奏家としてこれからという40代前半で逝去してしまったため、知るひとぞ知る名歌手となってしまいました。それとともにM.S.スッブラクシュミがインド独立後も最晩年まで華々しい魅力を放ち続けたため、今ではその名声は陰に隠れてしまうこととなっています。

まだその実力を惜しむ声は多く、残された録音が販売されています。その歌声を聞く限り当時活躍した三人の女性歌手の中でも図抜けた魅力を放っています。もっと長生きして活躍していたらさぞかし素晴らしい録音を残していたのだろうと思うと残念至極。明るくすっきりと伸びきるバネのある声。完璧にコントロールされたテクニック。全てが兼ね備わっています。
⇒ソフト情報・購入先(世界の民族音楽の店 ZeAmi)
⇒試聴先(Music India OnLine)
おすすめサイト
Sangeetham.com
カルナーティック音楽の情報をまとめた総本山的サイト。非常にしっかりとしたレポートが掲載されています。レッスンをはじめかなり専門的な情報まで実に充実しています。特に往年の演奏家の詳細なバイオグラフィーは非常に貴重です。間口を広く取った素晴らしいサイトです。写真も興味深いものが多々あり貴重です。
karnATik South Indian classical music lyrics Royal Carpet
カルナーティック音楽を筆頭に南インドの映画音楽に至る情報がこれでもかと言わんばかりに見事なデータベース化されています。非常に専門的な情報まで持っているのにも関わらず、イントロダクションなどの場所がわかりやすくて親切なのが特徴。
Nada Anuboothi - Divine experience of music
販売されている珠玉のソフトを全曲をそのままオンラインで紹介しているサイト。往年の演奏家を中心に、透徹した審美眼でチョイスされたものばかりが紹介されています。かなりカルナーティックの概要を知っている人でないと使いこなすのは難しいですが、使いこなせるようになると宝の山サイトです。
≪梵・漢・和≫.com
恥ずかしながら当メルマガ編集者の運営するもうひとつのサイト (^^;) 南インド《梵》・中国《漢》・日本《和》。その間には共通するアジアの文化を紹介しています。中でも南インド文化理解ということでカルナーティック音楽のページは力を入れています。しかし最近忙しさにかまけて更新できていないのは、全て私の責任。。。
お知らせ
二月に入ってから大幅に琥珀音響工芸舎ホームページのデザインを更新しました。いままでは、緑豊かな感じを出してと思ってデザインしていましたが今回は柄にもなくシックな感じを出そうと試みてみました。

メルマガのバックナンバーもいままでよりずっと見やすく出来たかなと思っています。ご興味がありましたらどうぞご覧になってくださいませ。ご感想もいただけますと幸いです。

後 記
天才数学者ラマヌジャン。20世紀前半のヨーロッパに突如現れた南インド人に数学会は震撼とすることになりました。

私は大学生の頃から南インド古典音楽(カルナーティック音楽)が大好きでした。知れば知るほどその魅力にはまっていき、とうとう初めてのホームページ開設するまでに至り、さては現在の琥珀音響工芸舎を始める遠因となりました。

カルナーティック音楽の一番の特徴は数学的美しさに対しての感性が非常に発達していることが言えると思います。特にその感性は打楽器パートで顕著です。現地の演奏会では、実際の打楽器だけで演奏するパートになると私たちが考えているコンサートとは全く異にする光景を目にすることになります。

この打楽器だけのパートはタニ・アヴァラタムと言います。この部分の妙味はターラの分割にあります。難しいことを言っても?ですので強引に噛み砕いて説明すると(^^;)、そろばんでの暗算がどれだけ見事に出来るかということ。「願いましては〜!!」での暗算が見事に最後ピタリと着地を決めると、観客席からオオーッと拍手が起こるのです。

それですので打楽器パートの見せ場タニ・アヴァラタムになると観客席では観客が皆なんと!手で膝を叩いて数を数え始めるのです !! もちろん中には数え間違えている人もチラホラ。ご婦人方は興味がないのか一斉にトイレタイムとなっていますが、男性の観客はここぞとばかりに目をキラキラさせながら数を数える数える。。。

天才数学者ラマヌジャンを知ったのは前回紹介した藤原正彦氏がNHK人間講座でやった「天才の栄光と挫折−数学者列伝」でした。その番組は、ここ何年間のテレビ番組の中でも指折りの印象を残しました。そこで藤原氏が言っていたのが天才数学者は環境と文化の中から生まれるということ。それとともにラマヌジャンの生まれ育ったタンジョールという古都の美しさ、特に町の象徴とも言えるブリハデーシュワラ寺院の美しさを称えていました。そしてその寺院の美しさがまるでラマヌジャンの数学を見ているようだとのことでした。

Brihadeeswara Temple
このブリハデーシュワラ寺院。わたしも見に行って余りにもの美しさに圧倒されました。それとともにその美しさはまさに数学的な美しさでした。その体験を持っていただけに、藤原氏の語るひと言ひと言に頷くばかりでした。しかし触れられるかどうかと思っていたところでするりと逃げていったのが、カルナーティック音楽の話でした。

ラマヌジャンが大天才と言われた所以は毎日新しい定理を発見していたということ。それは数学の世界だけで考えると驚き以外の何ものでもないのでしょうが、カルナーティック音楽を知っていると非常に納得がいくものです。いわばラマヌジャンは毎日同じ主題を異なった変奏で奏でていたというのが見えてくるのです。

藤原氏は、俳句が非常に似ていると指摘していますが卓見だと思います。もっともなシンプルな言葉で自然の神秘を一瞬にして描き出してしまう俳句。一方、自然の中に数字の神秘を見る圧倒的な数学の美しさ。その神秘を感じさせる壮麗なブリハデーシュワラ寺院。

もしご興味があったら旅行するのはなかなか大変ではありますが、下記のリンクをクリックしてその美しい姿をご堪能いただけたらと思います。
【 Brihadeeswara Temple : 1 】   【 Brihadeeswara Temple : 2 】
編集担当:中村 聡

【ご意見・お問い合わせ】 : mailing@onkanwa.com

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