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琥珀音響工芸舎・メールマガジン【東風】
心安らいだり、思わず笑みを浮かべてしまう音楽などの情報、サイトを紹介していきます。毎月1・15日配信です。
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第45号 : 平成18年4月1日
耳を澄まして聞こえてくる自然の響き。思わず笑みを浮かべてしまう音楽などの情報、サイトを見つけてみました。
http://www.onkanwa.com/
(毎月 1・15日配信)
2006/04/01 号
ご挨拶
春満開です。予想通り、4月最初の土日が東京ではサクラが満開のようです。ポカポカ陽気についつい心がほころんできます。

いつもの年よりも10日も早い開花だったそうですが、開花の確認は靖国神社で行っているのですね。気象庁の中には職員の花見用として (^^) サクラが何本か植えられているのだろうと思っていました。てっきりそれを観察しているのだろうと。もちろん開花宣言を出した後、そこで職員さんは東京で一番早いお花見をするのだろうと。そのため春の陽気に誘われ、テクテクと気象庁の職員が靖国神社のサクラを見にいっているのを見て何か不思議な気がしました。

そういえば今年の開花は、WBCで日本の野球が世界一になった日で、おまけに春分の日。メデタイと国を挙げてお祝いすることになっていたような気がします。名実ともに日の光が明るさを取り戻すことになる春分をすぎ、これからの良い季節を楽しみたいところです。
おすすめCD
菅原伝授手習鑑 〜道明寺の段〜
豊竹山城少掾 ( 浄瑠璃 )
鶴沢清六 ( 三味線 )
( コロムビア : COCF71066〜7 )
昭和前〜中期を代表する浄瑠璃として活躍した豊竹山城少掾(とよたけ・やましろのしょうじょう)。名人中の名人として知られた彼が最も得意としていた演目のひとつが「菅原伝授手習鑑」の「道明寺の段」の段。「菅原伝授手習鑑」は権勢を誇っていた藤原氏の策略によって大宰府に左遷される道真を題材にした文楽(人形浄瑠璃)三大名作のひとつです。大宰府に左遷される途上、道明寺で暗殺されるそうになる場面を描いたものです。

その切迫した場面を、互いに芸を研鑚し義太夫界きっての名コンビと賞賛された四代目鶴澤清六の三味線とともに見事に演じています。もちろん、ひとりひとりの描き分けの見事さも瞠目すべきものですが、何よりもふところ豊かな語り口に思わず引き込まれてしまいます。傑作です。
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⇒試聴先(文化デジタルライブラリー)

八世 竹本綱大夫 義太夫「仮名手本忠臣蔵」
竹本綱大夫 ( 浄瑠璃 )
竹沢弥七 ( 三味線 )
( キングレコード : KICW-2505 )
昭和中期を代表する浄瑠璃として活躍した竹本綱大夫。明朗さとともに着崩れすることのない典雅な語りが特徴と言えるでしょう。ついつい「粋だなぁ」と唸ってしまいます。

ここで演じられているのは浄瑠璃で演じられることで日本を代表する物語りとなった「忠臣蔵」。歌舞伎でも忠臣蔵は有名ですが、最初に舞台に上げられ爆発的ヒットとなったのはこの浄瑠璃からでした。このCDでは、「忠臣蔵」の中でも語り芸の境地と称される「三段目:松の間の段」と三味線と囃子が華々しく活躍する「七段目:一力茶屋の段」を収録しています。義太夫の楽しさをぎゅっと詰め込んだ格調高い名録音です。
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⇒試聴先(HMV.co.jp)

菅原伝授手習鑑 〜寺子屋の段〜
竹本越路大夫 ( 浄瑠璃 )
野沢喜左衛門 ( 三味線 )
( ビクター伝統文化振興財団 : VZCG6 )
昭和中〜後期を代表する浄瑠璃として活躍した竹本越路太夫。文楽の語りは「声を惜しんだり、体を庇ったり、そんな生半可なことではやれない」を持論とし、浄瑠璃として人間性・体力・テクニックが万全な時期は短いと語っています。その言葉どおり、まだまだ活躍できるとの声も多かった平成元年には自らの判断で芸歴に幕を閉じました。

その話に裏付けられるように真っ直ぐ、真剣な語り口はキリリッと引き締まっています。自在に彩られる語り口と磨きに磨き上げられた声には、実に上手いというより他ありません。このCDで演じられるのは「菅原伝授手習鑑」の「寺子屋」の段。凄絶な悲劇を描いたこの場面。“潔さ”という言葉が浮かぶその語りがより一層悲しみを引き立たせています。
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⇒試聴先(じゃぽ音っと)
おすすめサイト
人形浄瑠璃文楽
文楽の写真を撮り続ける河原久雄氏のサイト。舞台、道具、演技の構造など文楽の世界を実にわかりやすく紹介しています。中でも演目の紹介では実に美しい写真から文楽の魅力が匂いたってくるよう。文楽への深い洞察と愛情が溢れています。
鬘司庵《文楽人形 鬘師・床山 名越昭司のかつら展示室》
文楽で使われる人形の顔を引き立たせる鬘(かつら)。鬘師・床山の名越昭司氏とその仕事などを紹介するサイト。鬘司庵のイベント・公演情報等の文楽・鬘司庵に関する情報が掲載されています。中でも文楽人形の鬘展示室の情報は思わずその仕事に見惚れてしまいます。
財団法人 文楽協会 オフィシャルウェブサイト
ユネスコの「世界無形遺産」として指定された「人形浄瑠璃文楽」。その文楽協会のページです。印刷物の紹介パンフレットをそのままキャプチャーで上げているだけの作りには思わず突っ込みを入れたくなりますが (^^;)公演スケジュールが充実しているのはありがたいです。
川本喜八郎 Official Web Site
NHKで放映された「三国志」(82〜84)「平家物語」(93〜95)の人形美術を担当した川本喜八郎氏のサイトです。製作エピソードを交えて語られる「作品紹介」も興味深いですが、一体の人形に込められた思い・こだわりを語った「人形ギャラリー」では、あの豪傑・英雄の名場面に隠された秘密を知る楽しさがあります。
お知らせ
「むかぁ〜し、むかしのことじゃった。。」このフレーズで有名な「まんが日本昔話」が物凄い注目を集めています。あののんびりとした語り口は思わず心が和んでくる何かがあります。どうやら日本人の心のふるさととして注目を集めているようです。小さいときに毎週土曜日、テレビをつけたらやっていたあの番組。当時では普通にある番組のひとつでしたが、今のテレビを見ると、まだあの頃は豊かな何かが残っていた時代だったのかなと思います。

人形歴史スペクタクル
平家物語 完全版
DVD SPECIAL BOX
その当時、夢中になっていた番組があります。それはNHKの人形劇。さすがに「プリンプリン物語」は見ませんでしたが(^^;)欠かさず見たのは「人形劇 三国志」。そして後に放映された「人形劇 平家物語」。いつも楽しみに見て、登場人物の描き出しの見事さと人形の表情の豊かさに思わず見入っていました。

人形の表情はいつも同じです。しかしひとつの顔にとどまっているからこそ、受け手がその顔に感じた表情を浮かべることができる。破顔一笑、慟哭の涙、儚き翳り。完成していないからこそ、演じ手と受け手の間で感情・感動が完成します。感情・感動を一方的に演じ手から押し付けられるのではなく、受け手が主体的に自らの心の芯から感じ入り、感動の主体となることができるのです。

それが人形劇や仮面劇が、変に表面的なリアリズムを求めていった演劇よりも遥かに人の心を揺り動かすことができる秘密なのでしょう。

バリ島で体験した影絵芝居でも同様のことを感じました。虫たちが鳴く月夜の下で演じられる影絵芝居。ひとつひとつの影絵の表情はリアリズムとは異なったものです。しかし、非常に豊かな想像力を膨らませてくれるものとなっています。目に見える表面的な動きや形だけを正しい姿(リアリズム)として求めすぎると、受け手の想像力が固定されてしまうような気がします。不完全だからこそ、想像力は膨らみます。

もちろん、現代劇などでも素晴らしいものがありますが、やはり人形劇・仮面劇で得られる感動は質が違います。かなり長い間、体の芯に響くものがあります。いま、浄瑠璃は大人気でいつも大入りとなっているそうです。いまこそ浄瑠璃が新しい (^^;) と、使い古されたフレーズは言いませんが、浄瑠璃をはじめとする人形劇の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

後 記
小学校の当下校の道すがらにあった神社。下校時に寄り道をしてアケビを取って遊んだりしていました。そのときの体験は自分自身の原風景となっています。

さて、このメールマガジンのタイトル【東風】は、春風の中“のほほん”とできれば良いなと思ってつけたもの。つい思い浮かんだだけで他意はありません。そのため、「東風吹かばにほひをこせよ梅の花 主なし とて春を忘るな」から取ったのではと言われて逆に、そう言えばそんな和歌があったなぁー、と思った次第でした。しかし春の花では、サクラよりも梅の花のほうが妙にウキウキするので、ちょうど良かったのかなと思っていました。

おすすめCDで紹介した人形浄瑠璃の「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」は、人形浄瑠璃の中の傑作中の傑作。この「菅原伝授手習鑑」で善玉はもちろん菅原道真。悪玉として出てくるのは天皇家へ自らの娘を天皇に嫁がせたことで権勢を欲しいままにしていた藤原時平。時平は密かに自らが天皇ととって変わらんと企んでいます。そのため人望厚く、急激に力をつけてきた菅原道真を策略に嵌めて失脚させ太宰府へ追放します。その追放劇の次第と悲劇を描いたのが「菅原伝授手習鑑」です。

菅原道真と言えばその死後、都で天変地異を起こったことで天神様として祭られるようになったのは良く知られるところ。その史実と伝説、そして上演された当時の最新ニュースをふんだんに取り込んだ人形浄瑠璃は瞬く間に人気を集め、今では「義経千本桜」「仮名手本忠臣蔵」とともに人形浄瑠璃の三大名作のひとつに数えられています。

今回、人形浄瑠璃を紹介しようと紹介しやすいCDを調べていくとこの「菅原伝授手習鑑」が一番紹介しやすいということに。「フムフム、名作だからねぇ」と思いつつ準備をしていたときに不意に気が付きました。実は私の心の原風景となっている神社。出身の鹿児島でも非常に由緒正しい天満宮様。そして無意識のうちにタイトルとしてつけていた【東風】。いやはや、世の中狭いものだ、何かしらの縁で繋がっているものだなぁと。。そりゃ、サクラより梅のほうに心惹かれるはずじゃわいとひとり納得でした。
編集担当:中村 聡

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