|
| おすすめCD |
|
|
|
日本SP名盤復刻選集U (日本語解説) :信時潔(北原白秋詩)交声曲「海道東征」 etc |
|
| 木下保(指揮)東京音楽学校管弦楽部・合唱団 etc |
| ( ローム・ミュージック : ANOC-6056a-61a ) |
 |
 |
戦前の日本で録音されたクラシック音楽のSP盤を復刻した6枚セットもの。来日した数々の名演奏家やベルリン・フィルを演奏したものまで貴重な音源が集まっています。中でも特筆したいのが以前、紹介したこともある信時潔(北原白秋詩)の交声曲「海道東征」です。1940年に作曲され、その翌年に録音されたものです。
日本神話を題材としたこの曲の素晴らしさは、何よりも音楽と言葉が一体となっているところ。実に美しい日本語の響きとそれに綾なす管弦楽の響き。緩やかでゆっくりとした叙情がまるで日本画の淡い色合いのように繊細な色の移ろいを描き出しています。実に平和でどこまでも安寧。
その麗しき叙情のもととなっているのは、平明かつ懐深くしっかりと足に地を踏みしめた信時潔の音楽とともに、1937年にはほとんど視力を失っていた北原白秋の詩。曲は1940年に発表されますが、白秋は1941年にはこの「海道東征」の源の土地といえる宮崎の高千穂を訪れ「ひく水に麻のをひてて月まつは清き河原の天地根元作りの家」との詩を残し、その翌年の1942年に逝去します。もともとはこの「海道東征」を第一部とする三部作を白秋は考えていたようなのですが、結果的には「海道東征」が彼の最後の傑作となったといえます。
SPからの復刻はノイズを取り過ぎると元の音・音楽が死んでしまうことがあります。ここでの復刻はノイズを下手に取ることなく元の音をかなり残しているところに好感が持てます。そして何よりも、その演奏の素晴らしさが特筆のもの。技術的にも録音にも問題があるのかもしれませんが、なぜかしらその演奏を聴いていると美しい山野、樹々の木漏れ日、遠き山に沈む夕日の色合い。静かに心の中から不意にたちのぼってくる光の淡いが感じられます。一般には薦めにくいタイトルなのですが、あまりにも素晴らしい音楽とその演奏。基本的には公共機関へ納められることを考えて作られているようなので、もし機会があったら一聴をお勧めします。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| オムニバス |
| ( キング : KICG3228 ) |
 |
 |
時代の波を受けて浮かぶ音楽。不当なまでに沈められる音楽。歴史というものがある特定の価値観から照らし出される単なる“ひとつ”の価値観から照らし出された一断面でしかないということ。しかし、世界各国の古今の民俗音楽や流行歌を聞いていると、時々の流行とは全く別に命を持ちえている音楽というのはあると言ってよいのではないかと思います。その命の源はただひとつ。音楽の音の動きのひとつひとつに嘘がないかどうか。そして誠実な心根がそこに籠もっているのかどうか。
「海道東征」の作曲家であり、「海ゆかば」の作曲者である信時潔は戦後不当に黙殺されてきた作曲家です。彼の音楽は平明でありながら日本語と日本人ならではの美質を生かすことを主題にしていたと言えるでしょう。大伴家持の詩「海行かば水漬く屍山行かば草むす屍 大君の辺にこそ死なめかへり見はせじ」に音楽をつけたこの曲は時代によって変遷する価値観によって変えることのできない名曲だと言ってよいでしょう。
ここではその「海ゆかば」を様々な視点から光を当てて演奏したものを集めています。中でも良いのは器楽のもの。さすがに歌ものは生々しさが残って最初は抵抗感がある人もいるのでしょうが、弦楽四重奏やチェロとピアノの合奏やピアノ・ソロを聴くとやはり名曲だということがわかっていただけると思います。時々の価値観によって変遷する価値観の中でも輝き続けるものはいつでも輝いているもの。それに気が付くかどうかは別問題。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
| 花岡千春 ( ピアノ ) |
| ( ベルウッドレコード : BZCS3016 ) |
 |
 |
どこか懐かしく、それでいて凛とした気品を持った音楽。懐深い叙情。それが信時潔の特徴と言えるでしょう。その美質は歌曲などに見ることができますが、残されたピアノ音楽にもその美質が生かされています。声高に語るのではなく光の具合に“フト”目を向けた瞬間、風の流れに“フト”耳を傾けた瞬間。そのときに“フト”聞こえてくるような静かな音楽。シンプルでいながら暖かい気持ちがそのまま伝わってくるような音楽となっています。
曲の出来ばえについては構成感とかいろいろな見方もあるのでしょうが、叙情の豊かさが何よりも心地よいです。音楽というよりも音の流れに身をまかせる感じでややBGM的に聞いてしまう部分もありますが、逆に風を感じるとでも言えるのでしょうか。心からリラックスして聞くことができます。名曲とは言えないのかもしれませんが、いつの間にか何度もかけている。そんな不思議さを持ったアルバムです。
|
|
|
|
|
|